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東京地方裁判所 平成6年(行ウ)49号 判決

原告 本間敏雄

被告 王子労働基準監督署長 国

代理人 伊東顕 柳井康夫 ほか三名

主文

一  原告の、被告王子労働基準監督署長が原告に対し平成四年一一月二六日付をもってなした労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号)による休業補償給付に関する一部不支給の処分はこれを取消す、との請求を棄却する。

二  原告のその余の訴えを却下する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告王子労働基準監督署長(以下「被告監督署長」という。)が原告に対し平成四年一一月二六日付をもってなした労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号、以下「労災保険法」という。)による休業補償給付に関する一部不支給の処分はこれを取消す。

二  被告国は原告に対し、前項によって取消された右一部不支給処分に関し、被告監督署長が行う新たな支給決定により確定する休業補償給付額を計算基礎として、これに対する平成四年一二月一日以降支払済みに至るまで年一四・六パーセントの割合を乗じた金員を支払う義務のあることを確認する。

第二事案の概要

本件は、原告が、被告監督署長に対し、労災事故に罹災したことから労災保険法による休業補償給付を請求したところ、被告監督署長が同法四二条の規定する消滅時効が完成していることを理由に前記一部不支給処分をなしたので、この処分の取消しを求めるとともに、国に対し、右休業補償給付についての遅延損害金の支払義務の確認を求めた事案である。

(争いのない事実等)

一  原処分に至る経緯と処分内容

1 第一次処分とその取消

(一) 労災事故の発生

原告は、昭和五五年三月一四日、勤務場所の昭和重機株式会社王子工場においてボール盤による穴開け作業に従事していた際、ボール盤のハンドルが落下し、これにより頭部を強打される災害に罹災し、右災害により、くも膜下出血の初期発作が発生し、同月二一日、再発作が発生して重篤な症状に陥った。

そこで、原告は、同月二四日、岩槻中央病院に入院したところ、同病院における当初の診断名は「頭部打撲・頭内出血」であり、入院後、同病院においてくも膜下出血との確定診断がなされ、同病院の指示により、同年四月七日、東京厚生年金病院に転院し、同月一四日、クリッピング手術を受けた。

(二) 労災保険給付の支給決定

勤務先の昭和重機株式会社は、原告に代わり、療養補償給付請求書を岩槻中央病院を経由して被告監督署長に提出した。

被告監督署長は、右請求について支給決定を行い、岩槻中央病院でなされた療養の現物給付について、昭和五五年七月一四日と同年九月一二日の二回に分けて、診療費全額の支払を岩槻中央病院になした。

しかしながら、被告監督署長は、東京厚生年金病院の請求分に対しては、原告の疾病がくも膜下出血であることを理由に労災給付ができない旨を通知した。(〈証拠略〉)このため、同病院は健康保険による医療を行った。

(三) 労災保険給付支給請求

原告は被告監督署長に対し、昭和五七年三月九日、休業補償給付請求(第一回)(請求書記載の休業期間は昭和五五年七月一日から昭和五七年三月九日まで)をなした。

また、原告は、東京厚生年金病院を経由して、療養補償給付の請求をなした。

(四) 第一次処分

被告監督署長は原告に対し、昭和五七年九月七日、右休業補償給付請求について不支給決定を行った。(以下「第一次休業補償給付不支給処分」という。)

また、被告監督署長は、同日、療養補償給付(東京厚生年金病院からの請求分)請求についても、不支給処分をなした。(以下「第一次療養補償給付不支給処分」という。)

被告監督署長は、昭和五八年六月二九日、療養補償給付(岩槻中央病院に支払済分)の支給決定について、この決定を取り消す処分を行い、原告に対して岩槻中央病院に支払済の医療費の返戻を求めた。(以下「第一次療養補償給付支給決定取消処分」という。)

原告は、右処分を不服としながらも、医療費の返戻を行った。

(五) 第一次処分の取消

原告は、昭和五七年一一月二日、第一次休業補償給付不支給処分と第一次療養補償給付不支給処分を不服として審査請求をなし、また、昭和五八年七月一日、第一次療養補償給付支給決定取消処分を不服として審査請求をなしたところ、東京労働者災害補償保険審査官は右事件を併合した。(以下併合された三件の処分を総称して「第一次処分」という。)

右請求に対し、右審査官は、昭和五九年一〇月三一日、審査請求を棄却した。

そこで、原告は右決定を不服として、昭和五九年一一月二一日、再審査請求をなしたが、労働保険審査会は、昭和六一年一二月九日、再審査請求を棄却した。

原告は、昭和六二年三月九日、第一次処分の取消を求めて東京地方裁判所に提訴したが、同裁判所は平成二年請求棄却の判決をした。

原告は右判決を不服として東京高等裁判所に控訴し、同裁判所は、平成四年七月三〇日、第一次処分を全部取消す旨判決し、右判決は確定した。

2 第二次処分

(一) 療養補償給付関係

被告監督署長は、右の第一次療養補償給付支給決定取消処分については、平成四年一〇月二三日付をもって変更決定をなし、改めて支給を決定し、原告に返戻させた療養費用五二万九〇四〇円を原告に支払った。

しかし、被告監督署長は、第一次療養補償給付不支給処分について、平成四年一〇月二三日付をもって変更決定をなした。(以下「第二次療養補償給付不支給処分」という。)

右処分の内容は、原処分を取り消したものの、健康保険扱いで受診済みであることを理由に、今回の支給額は〇円であると決定するというものであった。

(二) 休業補償給付関係

被告監督署長は、平成四年一〇月二三日付をもって不支給決定の変更決定を行い、右休業期間についての休業補償給付の支給を決定した。

原告は、平成四年一〇月一三日、同月一四日受付をもって休業補償給付の第二回請求(休業期間昭和五七年三月一〇日から平成四年七月三一日まで)をなした。

被告監督署長は、平成四年一一月二六日付をもって、第二回請求分の一部である昭和五七年三月一〇日から平成二年一〇月一三日までの期間については、労災保険法四二条の規定による消滅時効が完成しているとの理由で不支給決定を行い(以下「第二次休業補償給付不支給処分」という。)、また、平成四年一一月三〇日付をもって、平成二年一〇月一四日から平成四年七月三一日までの分については支給決定を行った。

原告は、平成四年一一月二七日、休業補償給付の第三回請求書(休業期間平成四年八月一日から同年一〇月二二日まで)を被告監督署長に送付した。被告監督署長は、同年一二月一一日、右請求額全額について支給決定を行った。

(三) 審査請求前置

原告代理人は、平成四年一二月一九日、東京労働者災害補償保険審査官に対し審査請求を申し立てた。

東京労働者災害補償保険審査官は、平成六年一二月五日、第二次療養補償給付不支給処分を取り消したが、第二次休業補償給付不支給処分についての審査請求については消滅時効を理由にこれを棄却した。

原告は、第二次休業補償給付不支給処分に関する審査官決定を不服として、平成六年一二月一六日、労働保険審査会に再審査を請求した。

(争点)

一  請求一に関して

第二次休業補償給付不支給処分の適否であるが、争点となったのは次の三点である。

1 労災保険法四二条は時効期間、除斥期間のいずれを定めた規定か。

2 仮に、同条が時効期間について定めた規定であるとするならば、時効の起算点如何。

当初の休業補償給付請求に対して業務起因性を欠くとして不支給決定がなされたが、右決定につき、不服審査の申立て又は訴訟の提起があって、未だ業務起因性についての判断が未確定である場合、右請求日以降の休業補修給付請求権の消滅時効は、右不支給決定が確定するまで進行しないか。

3 本件において時効制度を適用するのは、信義誠実の原則、あるいは公序良俗に違反しないか。

二  請求二に関して

1 本件訴えに確認の利益があるか。

2 本件において、被告監督署長は、原告の休業補償請求権が時効消滅しないことを容易に知り得たといえるか。(過失の有無)

3 遅延損害金の利率

(当事者の主張)

一  労災保険法四二条は時効期間、除斥期間のいずれを定めた規定か。

1 原告

労災保険法四二条は時効期間について定めた規定である。

2 被告

労災保険法四二条は、時効という文書を用いてはいるが、その実質は、労災保険給付の支給決定を求める権利の行使について除斥期間を定めたもの、換言すれば、労災保険給付請求書の提出期間を規定したものである。

二  労災保険法四二条が時効期間について定めた規定であるとした場合の時効の起算点について

1 原告

休業補償給付は、その法的性格として、基本権部分と日ごとに発生する具体的請求である支分権部分とに分けることができる。基本権部分の発生要件は、労働者性の肯定、負傷・疾病・障害又は死亡の事実の存在、業務起因性と業務遂行性の存在、給付基礎日額の確定であり、支分権部分の発生要件は、療養の必要性の存在、療養に起因した労働不能、労働不能に起因した賃金請求権の喪失、調整事由の存否である。

ところで、支分権発生以前の基本権部分で権利が否認され、基本権部分の存否を確定するための行政不服審査と行政訴訟手続が行われている間は、基本権部分と分離して支分権部分のみの時効は進行しないと解すべきである。

本件においては、被告監督署長が、第一回目の請求に対し、保険給付共通の基礎的要件事実である「業務上」について争っており、その間は当該休業補償給付についての基本権の部分が定まらないことになるから、第二回目の請求が可能になるのは、第一回目の請求に対する行政処分の取消しが確定したときである。

2 被告

労働基準監督署長が労働者の休業補償請求に対し「基本権が確定されていない」ことを理由として不支給処分をすることはできないから、休業補償給付請求権を「基本権」と「支分権」とで構成されているとする原告の主張は、実定法の裏付けを欠く立法論に属するものであって失当である。

第一回目の休業補償給付請求において実務起因性が争われていることは、第二回目以降の休業補償を受ける権利の行使を何ら妨げるものではない。

三  信義則・公序良俗違反の有無

1 原告

仮に、労災保険法四二条の時効の規定が昭和五七年三月一〇日から適用されるとしても、本件において時効制度を適用するのは信義誠実の原則に違反し、かつ、公序良俗違反である。

労災保険法四二条の趣旨は行政事務処理上の合理性の確保にあるが、本件においては時効を援用しなければ行政運用が阻害されるということにはならない。

労災保険法は迅速かつ公正な保護(一条)を目的としているにも拘わらず、被告監督署長は救済を遅延させていながら、その遅延した期間について時効の主張を行うのは権利の濫用である。

2 被告

争う。

四  請求二の訴えに確認の利益があるか

1 被告

原告の請求二の訴えは、現在の権利又は法律関係の確認を求めるものでなく、かつ、即時に確定すべき利益もないから、確認の利益を欠くものとして却下されるべきである。

2 原告

争う。

五  本件において、被告監督署長は、原告の休業補償請求権が時効消滅しないことを容易に知り得たといえるか(過失の有無)

1 原告

被告監督署長は、平成四年一〇月一四日、原告代理人から時効に関する意見書と関連判例の送付を受け、関連する判例の存在と内容について指摘を受けていた。労働省労働基準局監修の「労災保険法解釈総覧」には法四二条に関する行政解釈の先例として、昭四五・一二・二五 四四基収第五八七〇号が掲載されていた。右判例と行政解釈例を精査すれば、業務上外の基本権部分で係争中は、関連する給付請求権について請求書の提出がなされないばかりか給付の種類が異なる場合においてすら時効消滅しないことを容易に知り得たのである。それにもかかわらず、被告監督署長は、東京高裁判決によって取消の対象となった同一種類の給付であり、取り消された不支給処分の対象である休業期間に連続した休業期間に関する請求である第二回目の休業補償給付請求について、請求権の一部が時効消滅していると判断し不支給処分に及んだのであるから、被告監督署長には過失がある。

2 被告

争う。

六  遅延損害金の利率

1 原告

被告監督署長は、第二回目の休業補償給付のうち直近の二年分については平成四年一一月三〇日に支給決定を行っているのであるから、被告監督署長が注意義務を尽していれば、右二年分以前の分についても、同日までに支給決定を行うことができた。ところで、労災保険制度においては、事業主が労働保険料の支払を遅滞した場合、年一四・六パーセントの割合で遅滞金を納付することとされている(労働保険徴収法二七条一項)。保険料滞納に関する制裁と保険給付未払に関する制裁とは均衡が取られて当然である。

よって、原告は、国家賠償法に基づき、被告国に、不支給処分取消後の新たな支給決定により確定する休業補償給付額を計算基礎として、これに対する平成四年一二月一日から支払済に至るまで年一四・六パーセントの割合を乗じた金員を支払う義務のあることの確認を求める。

2 被告

争う。

第三争点に対する判断

一  請求一に関して

1  労災保険法四二条は、時効期間、除斥期間のいずれを定めた規定か。

労災保険法四二条は、法文上「時効によって消滅する」と明記しており、同法上の保険給付請求権は、それぞれ給付ごとの支給事由が生じた日に発生する権利であって、その行使が容易である反面、いたずらに長期にわたって不安定な状態下に置くことは煩瑣な事務をますます複雑化するおそれがあることから、短期消滅時効期間を定めたものと解すべきである。

したがって、労災保険法四二条が除斥期間を定めたものであるとの被告の見解は採用しない。

2  労災保険法四二条の消滅時効の起算点について

労災保険法四二条は、消滅時効の起算点について直接の定めをしていないので、同法四三条により、その消滅時効の起算点は、民法の一般原則によって決すべきである。

そうすると、消滅時効は、権利者において権利を行使することにつき法律上の障碍事由がない限り、権利を行使することのできるときから進行することとなる(民法一六六条)。したがって、本訴で問題となっている休業補償給付請求権についてみれば、この請求権は、業務上の傷病による療養で労働することのできないために賃金を受けない日ごとに発生し、その日ごとに発生する受給権については、それぞれその翌日から時効が進行することとなるので、昭和五七年三月一〇日から平成二年一〇月一三日までの休業補償給付請求権は、これを行使するにつき法律上の障碍事由の存することは認められないから、時効期間の経過により時効消滅したことは明らかである。

原告は、休業補償給付の法的性格を基本権部分と支分権部分とに分け、基本権部分で権利が否認され、この存否を確定するための行政不服審査と行政訴訟手続とがなされている間は基本権部分と分離して支分権部分のみの消滅時効は進行しない旨を主張する。

しかしながら、休業補償給付の法的性格を基本権部分と支分権部分とに分ける原告の右見解は、独自の見解であって採用することはできないから、この見解を前提とする原告の右主張は、その余の点について検討するまでもなく理由がない。

また、原告は、第一回目の請求について基本権の存在が確認されない限り、第二回目以降の請求、すなわち支分権の請求についても基本権の不存在を理由に権利が否定される構造になっているので、第二回目以降の請求、すなわち支分権たる各請求期間ごとの具体的請求の権利を行使することができるときとなったのは、第一回目の請求に対する不支給処分取消請求訴訟事件についての判決が確定したときからである旨を主張する。

しかしながら、休業補償給付の法的性格を基本権部分と支分権部分とに分ける見解の採用できないことは右に述べたとおりであるが、原告の右主張を第一回目についての不支給処分取消請求訴訟事件の判決未確定が時効の進行を妨げる法律上の障碍事由となるとの見解として善解するとしても、右判決未確定が法律上の障碍事由とは解されないので、原告の右主張も理由がない。

さらに原告は、労災保険給付を請求しつつ、健康保険による給付を受けることは矛盾し、労災であることを理由に健康保険による給付を拒絶されるから、原告の生命の危険を回避するためには労災保険給付の請求を留保して健康保険給付を受けざるをえなかったのであり、このようなことから労災保険法四二条の時効の起算点である権利を行使できるときとは、第一回目の請求に対する不支給処分の取消請求事件の判決が確定したときからであり、また、このような事情のもとでは時効制度を適用することは信義誠実の原則、あるいは公序良俗に反する旨を主張する。

しかしながら、健康保険による保険給付の支給対象である療養につき労災保険給付を受けながら健康保険による給付を受けることはできない(健康保険法五九条の六)が、原告の主張するように労災保険給付を請求しつつ、健康保険による給付を受けることは何ら矛盾することはないし、また、これを妨げる法上の根拠はないから、原告のこの点に関する主張は理由がなく、また、右のような矛盾を生じていることから労災であることを理由に健康保険による給付を拒絶されるとの原告の主張も、原告独自の主張であって、右のような拒絶ということが発生する法上の根拠はないから、原告のこの点に関する主張も理由がない。

なお、原告の右主張を第一回目の不支給処分取消請求訴訟事件判決未確定が法律上の障碍事由となるとの主張と善解するとしても、これが法律上の障碍事由とならないことは前述したとおりである。

また、原告は、休業補償給付請求に時効制度を適用することは信義誠実の原則、あるいは公序良俗に違反する旨を主張するが、労災保険法四二条所定の時効については会計法三一条一項の適用があり、時効の援用を要しないと解されるから、被告には、時効を援用するか否かの裁量の余地はなく、消滅時効期間の経過により当然に原告の休業補償請求権は消滅するのであるから、原告の右主張は、独自の見解を前提にしたものであって理由がない。

最後に、原告は、第一回目の請求について不支給処分があり、これを争う者は、少なくとも二年に一回は時効中断のために休業補償給付請求をし、さらに、不服申立手続を経て行政訴訟を提起しなければならないし、その行政訴訟が併合審理されるとは限らないなどの不都合が生じる旨を主張する。

しかしながら、原告の主張するような者は、休業補償給付を請求することによって、療養の経過や治癒の有無、休業の状況等について、これらに関する記録が保全されることとなり、第一回目の申請について不支給処分を取消す旨の判決が確定すれば、支給権者において第二回目以降の請求についても迅速に措置することが可能となり、証拠の散逸によって生じる手続の遅延を回避することができるのであるから、休業補償給付を支給するために右のような手続をとることがこの者に不当な負担を課するものということもできない。したがって、この点に関する原告の主張も理由がない。

2  小括

よって、原告の請求一は理由がない。

二  請求二に関して

1  本件訴えに確認の利益があるか。

被告は請求二につき訴え却下の判決を求めるので、この点につき判断するに、労災保険法による保険給付は、同法所定の手続により行政機関が保険給付の決定をすることによって給付の内容が具体的に定まり、受給者はこれによって初めて政府に対しその保険給付を請求する具体的権利を取得するのであり、それ以前においては具体的な保険金給付請求権を有しないから、休業補償給付請求権自体が被告監督署長の支給決定により初めて具体的に発生するものである以上、原告が確認を求める損害賠償請求権の訴えも、将来の権利又は法律関係につき確認を求める訴えであると解されるところ、確認の訴えは現在の権利又は法律関係についてのみ認められ、将来の権利関係については確認の利益がなく許されないと解すべきであるから、原告の請求二の訴えは確認の利益を欠いた不適法な請求であるといわざるをえない。

2  小括

よって、原告の請求二の訴えは確認の利益を欠き、却下を免れない。

第四結論

以上のとおりであるから、原告の請求一は理由がないのでこれを棄却し、二については確認の利益がないのでこれを却下する。

(裁判官 林豊 合田智子 三浦隆志)

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